スカイ・クロラ/押井守

終始淡々とした物語運びの中に突如現れる陶酔的なまでに美しい女性達のカットを見るだけでも十分だった。このフィルムは成熟とは、ということが主題の一つなのかもしれない。キルドレという決して歳を重ねることの無い永遠の子供たちを、ほんの一握りを除いて経済的にも精神的にも決して成熟することの無い演劇人(男)と重ねてしまわざるを得ない瞬間がある。僕達は決して経済的にも精神的にも成熟した『大人の男』には勝つことが出来ない。ラスト、函南は劇中決してその姿を見せることの無い(!)「ティーチャー(大人の男=父=神)」に勝ち目の無い戦いを挑み無残に散っていく。僕はそこで一人さめざめと泣くことも出来たが隣にいたカップルがそれを許さなかった。