season off

  • ふと、宇多田ヒカルを適当に聞き返している。いくつかの曲ではコドモみたく止め処も無く溢れる情緒とそれを静かに俯瞰している/しようとする視線の共存がある。
  • 「かなしみ」をやり過すにはどうするかということ−感受性を閉ざし「かなしみ」の只中に留まることを避け「かなしみ」を纏った状況と自己そのものさえも俯瞰し遠ざけようとする試みは挫折する。回避運動は失敗し抑制されていた情緒は堰を切って見苦しいまでに溢れ出す。心を閉ざしていくことの快楽に淫する感触−いくつかの曲はそれを表していて本当に息苦しい。
  • この曲はシングルにしてはつかみ所が無い。歌詞は漂白され、表層を滑る様だ。何故なら珍しく情緒は抑制された−もしくは歌い手は全てが過ぎ去ってしまった後の取り返しのつかない静寂の中に居る。諦観の元に、過去の「かなしみ」が静かに俯瞰される。
  • だが漠とした歌詞の中、具体性を持った呟きが最後に唐突に歌われる。その瞬間、「俯瞰」はまたしても挫折したのかもしれない。諦観の元にひた隠しにした「情緒」が再び蠢いている。